副鼻腔炎の頻度と特徴
日本で副鼻腔炎の人は200-400万人です(100人に2-4人)。このうち半分が急に感染症状が出る急性副鼻腔炎で、激しい鼻漏や局所の不快感を示し、残りの半分は慢性副鼻腔炎で、症状が長く続きます。副鼻腔は、脳・目・頬・歯・咽と隣接しており、色々な症状で患者さんを悩ませます。
五感(ごかん)とは、人間の代表的な感覚機能のことで、「目、耳、鼻、口、皮膚」が担当します。副鼻腔はこれらすべての感覚と密接に関係しており、その障害は私たちの生活の質を大きく損なうものです。しっかりした治療によりすっきりした鼻を取り戻しましょう。
副鼻腔炎の全体的な症状
・鼻漏や後鼻漏(黄、緑、青色で粘性)、悪臭、話すすり、鼻鳴らし
・粘膜腫脹や鼻漏による鼻詰まり(鼻閉)
・後鼻漏による咽頭不快感(咽頭炎)、痰、咳(喉頭炎、気管支炎)
・鼻かみによる耳の詰まり感や中耳炎、鼻出血
・悪化した場合の発熱、めまい、激しい頭痛(髄膜炎、脳膿瘍)
・熟眠障害、いびき、睡眠時無呼吸、日中の眠気、仕事や勉強の効率の低下、集中力低下
副鼻腔炎の発生メカニズム
鼻(鼻腔、びくう)と、左右・前後4種の副鼻腔(ふくびくう)とは、細いトンネルである自然孔(しぜんこう、副鼻腔の排せつや換気を行う)でつながっています。
鼻に吸い込まれたばい菌は、増殖して副鼻腔の自然孔を閉鎖させ、さらに副鼻腔内に炎症を広げます(副鼻腔炎、蓄膿)。
篩骨洞炎③:
後鼻漏、鼻根部痛、
匂いの低下
上顎洞炎④:
鼻声、鼻漏、頬痛、
顔のしびれ、眼痛、上顎歯痛
蝶形洞炎①:
後頭部痛、眼の奥の痛み、
後鼻漏、視力低下、
物が二重に見える(複視)
前頭洞炎②:
一側のおでこの痛み、
眼痛
検査の種類
・内視鏡(ファイバースコープ):
内視鏡という細長いカメラ(胃カメラより細いタイプ)を鼻から入れて鼻腔の自然孔を観察するとともに、咽喉頭の炎症の有無を調べます。
・CT撮影:
内視鏡で副鼻腔炎が疑われた場合、CTにて、各副鼻腔に波及した炎症(蓄膿の状態)を観察します。また、炎症の程度の強かった方では、数か月後に再度CTを行い、副鼻腔炎がどこまで治っているかを判断します(治療効果判定)。
・細菌検査:
難治性と考えられる場合は鼻漏や後鼻漏のなかの細菌の検査を行い、どのような抗生物質に効果があるか(抗生物質感受性)を調べます。
・採血:
採血で炎症の程度や背景を調べます。アレルギーや後述の好酸球炎症がベースになっているかを、好酸球やスギ・ヒノキ・ホコリ・アレルギー抗体IgEなどの値で判断します。
治療方法
1.副鼻腔炎の内服(保存的)治療
かつての治療はまず手術でしたが、今では抗生物質が発達してきました。一般的にまず1週間、殺細菌力の強い抗生物質を内服したのち、炎症抑制の抗生物質(クラリス®など)を数カ月間内服します(副鼻腔炎が強い場合は3カ月以上)。 炎症の強かった方では、そののち、再度CT撮影を行い、副鼻腔炎が回復していることを確認します。
症状に合わせ、咳止め(鎮咳剤)、痰の薬(去痰剤)、トローチ、抗アレルギー剤、点鼻薬、漢方薬、消炎鎮痛剤を併用します。また、食塩水による鼻うがい(鼻洗)お勧めします。ただし、後鼻漏は、副鼻腔炎が改善してもなかなか完治しない場合があります。
2.副鼻腔炎の外科的治療
薬の治療によっても副鼻腔炎症状が強く残る方では、手術をお勧めします。ご都合の良い地域の中で、その時期に手術成績の良い医療施設を選んでご紹介します。
手術法として、局所麻酔と全身麻酔の2種類があります。局所麻酔は多くが日帰り手術であり便利ですが、手術中の不快感や、術後24時間の術後出血(約1%)の可能性があります。全身麻酔では数日間の入院管理となります。いずれの手術でも術直後に鼻出血防止用のタンポンを鼻内に挿入し、後日抜去します。
手術は、鼻から内視鏡と細い手術機器とを入れて行いますので(内視鏡下鼻副鼻腔手術)、顔面や口内は傷つけません。病変を取り除いたうえ、各自然孔を広くし(自然孔開放)、また、副鼻腔にたまった膿や炎症で腫れた病的粘膜やポリープ(鼻茸)を除去します。鼻中隔湾曲や下鼻甲介腫脹(アレルギー性鼻炎でよく生じる)があれば、鼻中隔や下鼻甲介の一部を切除して整え(鼻腔形態手術)、さらにアレルギー反応に関与する神経の切除(後鼻神経切断術)も行います。
鑑別が必要となる特殊な副鼻腔疾患
・歯性上顎洞炎 上の歯(主に上顎臼歯)の虫歯の炎症が、上顎洞に波及して起こる副鼻腔炎(上顎洞炎)です。歯科での治療と並行して副鼻腔炎治療を行います。
・真菌副鼻腔炎:アスペルギルスという真菌が上顎洞自然孔に感染し、さらに慢性の上顎洞炎をおこします。残念ながら薬(抗真菌薬)は効果が低いです。主な症状は後鼻漏で、軽度なら放置してもいいですが、強い場合は手術されます。
・好酸球性副鼻腔炎 比較的最近になって発見された副鼻腔炎です。まだ原因は不明ですが、副鼻腔の中の両篩骨洞に好酸球が集まって炎症を生じ、後鼻漏、匂い(嗅覚)障害を起こします。好酸球は気管や肺にも達して、喘息を合併します。治療として、手術による鼻内病巣切除と、ステロイドホルモン剤や、さらに、生物学的製剤(デュピクセント®など)を用います。この疾患は再発傾向があり、難病に指定されています。当院は難病指定の医療機関であり、一定の条件下ながら疾患の診断・難病指定・医療費補助を行います。
・鼻副鼻腔腫瘍 腫瘍として、悪性に移行することのある「乳頭腫」や、悪性である「癌」があります。乳頭腫では鼻内でポリープ様に成長し、鼻閉を起こします。癌では、粘膜や骨を破壊して進展しますので、反復する鼻出血・汚い鼻水・上あごや頬の硬い腫脹などの症状を示します。早々の治療が必要です。
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